長時間労働の企業リスク(本当のトコロ)

「長時間労働は良くない!」

このような意識は急速に広まっていますが、具体的な対策は遅れがちです。

今回は、意識と対策とのギャップが新たな企業リスクを生んでいるというお話です。

 

平成29年1月17日、厚生労働省は報道関係者に対して、「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」を公表しました。

監督指導の対象となった10,059事業場のうち、違法な時間外労働が確認され、是正・改善に向けた指導を受けたのは4,416事業場(43.9%)でした。

厚生労働省は今後も長時間労働(月80時間を超える残業)が疑われる事業場に対する監督指導の徹底をはじめ、長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行っていくこととしています。

 

厚生労働省(労働基準監督署)の監督指導は、長時間労働による過労死などに関する労災請求があった事業場が対象とされました。

では、そのような事態に至らなければ良いのでしょうか?

 

残念ながら、そうではありません。

国は「働き方改革」のなかで長時間労働の是正を挙げています。このこともあり、「長時間労働は良くない」との考え方は最早、労働者の共通認識となりつつあります。他方、人材不足や少数精鋭による業務遂行により、労働時間の短縮化を思うように進められない多くの企業。

この意識と現実との差が、労働者の職場への不信感や不満感を急速に高めています。職場への不信感や不満感が満ちた状態では、仕事の生産性や企業の収益性の向上は望むことが困難です。最悪の場合、労働者の退職に繋がってしまうことさえもありえます。

労働者は、「仲間と楽しく働ける仕事」「失業の心配のない仕事」「健康をそこなう心配のない仕事」を理想としているのです。(『日本人の意識』調査〔NHK放送文化研究所、2013〕)

 

今、必要とされているのは、経営者が「従業員の豊かな人生を守りたい!」と切に願い、現場で働く労働者と共に、長時間労働対策を進めることを宣言することです。そして、現場の意見を最大限に尊重しながら対策を長期的に進めていくことです。成果や問題点は全職員で必ず共有し、建設的な意見交換を行うことが重要です。