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地震等の災害発生と賃金・給与

 地震等の災害発生に際し、休業とする・休業となることは決して稀なことではありません。

では、その際の給与(賃金)の取扱い(支払い)はどうしたら良いのでしょうか(どうなるのでしょうか)?


 従業員の皆様から、厳しいご指摘をいただく前に、しっかりと確認し、適切な処理(賃金計算・給与計算)をすることが強く求められています。


ここで詳細を論じることは到底できませんので、緒論のみを記させていただきます。

 

 さて、“雇用契約(労働契約)は、労働の提供に対して賃金を支払うことを約しているのですから、労働の提供がなされない場合には賃金の支払いを要しない”との考えが、先ずは頭を過ぎるのではないでしょうか(いわゆる「ノーワーク・ノーペイの原則」)。

 加えて、仮に会社側の都合によって労働の提供機会を奪ってしまったのであれば、何らかの賃金を支払うべきはないかとの考えにも至るかもしれません(民法上の「債務者の危険負担」や労働基準法上の「休業手当」等)。

 

 ここまで論により、“地震発生は会社側の都合ではないので、労働の提供がない以上は賃金の支払いは要しない”と結論付けて良いでしょうか。

 

 答えはそう簡単ではありません。

 

 地震(これによる停電や断水、交通機関の運休、交通網の遮断等々を含む)と会社を休業としたこととの間に、どれ程の関連性・必要性があるのかを実態に即して判断する必要があります。

 地震により、早朝より一日中、公共交通機関が運休し、主要な交通網も遮断されていたのであれば、会社の休業に対して賃金の支払いを求める従業員の方はおられないかと思います。
 しかしながら、出勤途中に地震が発生し、代替の交通機関を乗り継ぎ、所定の始業時刻(午前9時)の2時間後(午後11時)に出社した従業員が、会社にて午前中の休業を知らされ、更に2時間後(午後1時)に始業したとしたら、賃金の支払いについて疑義は生じないでしょうか。

 

 地震等の災害が発生した際の、就労や賃金にかかわるルールを、就業規則(諸規定を含む)に事前に定めておき、従業員の皆様が安心して働ける環境を整えておくことが非常に重要です。

 

「備えあれば憂いなし」は、労働環境整備においても大切な考え方であると思います。

 

ブログやメールマガジンの紙幅ではお伝えしきれない詳細な情報もございます。
詳しくは、当事務所にお問い合わせいただくか厚生労働省のホームページ等をご確認ください。

 

 

【厚生労働省~地震に伴う休業に関する取扱いについて~】
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000017f9e.html